Q & A

「JIG」?それとも「治具」?

「 JIG(治具)」と呼ぶ物は工作機械を使うときに材料を支え、または案内し位置決めなどを正確に行なうための工作道具。 例えば、高精度なピッチで仕上げたジグ穴にまず焼入れブッシュを圧入します。そして主軸をそのブッシュ穴に沿わせた状態で切削ツールを通しますと、精度は劣る卓上ボール盤などでも安定したピッチ精度で穴加工を効率良く楽に行えます。 ほか、機械装置の組み立ての際や、 または、検査・測定にも精密治具をゲージとして多種多様に用いられます。この様に 治具(ジグ)があってこそあらゆる物の量産が可能になります。よって、まずは「 JIG(治具)」を作製することが、モノづくり全ての原点なのです。 「 治具 」とはそれを漢字で当て字したもの。驚くことに、発音を真似たのみならず、「 JIG 」という単語は極めて精密というニュアンスが強く、ヨーロッパ・アメリカでも意味がしっかりと通ずる訳語なのです。漢字やカタカナ表記すると馴染みがあり、いかにもらしい文字であるために外来語ということに気付いていない人もずいぶんいるのではないでしょうか。

備考

ジグ[jig]
機械工作の際、刃物や工具を加工物の正しい位置に導くために用いる補助工具。
[「治具」とも当てる] 三省堂 大辞林より抜粋

ジグ中ぐり盤って?

JIS規格 (JIS B 0105)ジグ中ぐり盤の定義
番号:412
用語:ジグ中ぐり盤
定義:
工作物に対する主軸の位置を高精度に位置決めする装置を備え、主としてジグの穴あけ及び中ぐりを行う中ぐり盤。主軸が水平の横形、垂直の立て形がある。
機械の大きさの表し方:
テーブルの大きさ、主軸頭及びテーブルの移動量、テーブル上面から主軸端面までの距離、並びに工作物許容質量。
対応英語:jig boring machine
慣用句:ジグボーラ



ジグ中ぐり盤は一般的にジグボーラー(治具ボーラー)と呼ばれ、名前の通り中ぐり盤に属す精密中ぐり盤の一種です。また、ボール盤の一種という見方もされるようですが、単にドリルで穴をあけるだけでないという意味ではボール盤とは似ても似つかない関係にあります。この機械の役割と趣旨は極めて正確な位置決めをした上で、マイクロボーリング装置を用いて高速度回転と微細な送りで非常に寸法精度の高い面に直径を削り仕上げることです。主に超硬合金製や高速度工具鋼(ハイス)製のボーリングバイトなどを駆使し、内径を公差の寸法に仕上げます。ボーリングホルダの入らない小径の穴には細軸の耳掻きバイトで仕上げます。このようにジグボーラーは特に高精度を要する治具などの多数の穴を精密に中ぐりする場合に最も多く用いられます。ピッチ補正装置付きの高精度送りネジや、格違いの光学的装置を備えていることによってμm(マイクロメートル)単位の極めて正確な心出しと測定検査を短時間で行えるのも特徴です。加工品の心出し方法は、基準となる端面からの追いかけ、あるいは振り分けのセンター拾い、基準穴からの心拾いなどがありますが、いずれも高精度マシンゆえ余裕をもって作業が行えるために、やり直しのきかない単品物や修正加工、完成品の追加工にもジグボーラーが優れた威力を発揮します。ジグ中ぐり(ジグボーラー)加工とは、フライス盤やマシニングセンタで荒削りを済ませてある下孔(焼き入れされていない)を仕上げる程度の軽切削なボーリングが一般的ですが、錐もみ・リーマー通し・ネジ切り・底面のサラエ(フェーシング)・フライス切削にも使用できます。位置決めには標準尺度の光学式読み取り装置により行いますが、補助的にダイヤルゲージや端面ゲージも使用し、場合により心出し顕微鏡も用います。これらにより位置決め精度は大中型の機械でも±0.003〜±0.005mm、小型の機械では±0.001〜±0.002mmの軸間(ピッチ)精度を得ることが可能です。当然ですが、元々これにも満たない精度しか出せない機械をジグボーラーと名乗ることなどできません。よって、マザーマシンを創るマザーマシンと呼ばれるだけに絶対的な精度を誇れる地位にある工作機械がジグボーラー(あるいはジグ研削盤)なのです。現在でもその精度を超えれる工作機械は存在せず、その信頼性と存在感は不動のものです。また、三次元測定器が普及した現在に至るまでは、ジグボーラー(あるいはジグ研削盤)を測定機器として代用されてきました。しかしそれは今日においても充分に実用レベルだと感じます。機械自身は真直度、直角度は勿論のこと水平度、真円度も極めて精巧にできているので、据え付け場所もクリーンで温度変化の少ない場所を選ぶのが一般的で、機械精度を維持するためには厳しく温度管理された恒温室に設置することが必須です。位置決めばかりではなく主軸部分も熱や応力によって影響を受けないようクイルスピンドルは高硬度で最高精度の軸受けが使用されており、テーブル面に対し主軸はフルストロークで極めて垂直な造りです。

さて、このように治具などの加工において、一桁上と言えるほどの精度をジグボーラーで出せるのは、ジグボーラーの精度が良いことも当然ありますが、品物取り付け→心出し→正確に位置決め→削り→関係寸法を測定→主軸位置や工具径寸法の調整→正確に位置決め→削り→関係寸法を測定→主軸位置や工具径寸法の調整→慎重に位置決め→削り→というふうに刃の切れ具合を常時確かめつつこれらの作業を何度も繰り返しては実に細かい神経を使って仕上げまで作業者自らが行っているのです。また、作業場の気温や雰囲気などの物理的要因にさえも影響を受けやすく、よって、物理的には限界にも近い僅か数ミクロン(μ)単位の精度に誤差が出ぬよう制御しようとするには長年経験を積んだ熟練者による勘所をなくしてはありえません。要するに、いくら最新で高精度を保証されている機械を使用したとしても作業者の技術力の差が顕著に現れてしまうのがこの機械の難易度レベルが高い事の証なのです。

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ジグ研削盤って?

JIS規格(JIS B 0105)ジグ研削盤の定義
番号:618
用語:ジグ研削盤
定義:
工作物に対して砥石軸を高精度に位置決めする装置を備え、主としてジグの穴の内面を研削する研削盤。
機械の大きさの表し方:
テーブルの大きさ、主軸頭及びテーブルの移動量、テーブル上面から主軸端面までの距離、並びに工作物許容質量。
ジグ中ぐり盤に準じる。
対応英語:jig grinding machine
慣用句:ジグ研

ジグ研削盤は通称では ジグ研(治具研)、または ジググラインダーと呼ばれます。ジグボーラーと同じくマザーマシンを創るマザーマシンであり、機械ワーク(X・Y・Zのフルストロークにおいて水平度、真直度、直角度、真円度は究極の空間精度を追求した工作機械であり、当然ながら位置決め精度は大中型の機械でも±0.003mm、小型の機械では±0.001〜±0.002mmの軸間(ピッチ)精度を得ることが可能で、ジグボーラーは除く他の工作機械の追随を一切許さない高精度を誇るのがジグ研削盤なのです。これも、頭にジグと付く名称なだけにジグボーラーとは大筋似ているのですが、大きな特徴の違いは、刃物削りに代わって、ダイヤモンド・CBN(ボラゾン)・WA(ホワイトアランダム)・PA(ピンクアランダム)・C(カーボランダム)、GC(グリーンカーボランダム)…ほか、これらの軸付砥石を主軸モーターに取り付け、ジグ研削盤ならではの超高速回転でもって研削および精密研磨を行うことです。被削材料は硬度に焼き入れされた金属の加工が割合を占めるますが、一般的な非鉄金属の加工はもちろん可能でありますし、その中でも難削材と言われる材質(ステンレス、インコネル、チタン、インバー、…など)や、刃物仕上げが出来ない 超硬合金、メッキ、セラミックス…など、または金属以外の特殊材料(当社ではテフロン…などの加工実績あり)、あるいは刃の立つ材質でも刃物仕上げより高精度な仕上げを求める場合などに用いられます。ジグ研削加工は、円(φ)穴の内径と穴の底仕上げが大部分を占めるてますが、円弧・角穴・キー溝・長穴(小判穴)…の内径も仕上げられます。また、反対にこれらの外径を仕上げることも可能。なお、ジグ研削加工はジグ中ぐり加工と同じかそれ以上の極めて高いミクロン(μ)単位の寸法精度で内外直径を研磨仕上げにて得ることができます。例えば、焼き入れ材を加工するに際し、要求精度がさほど厳しくない品物で軽度の焼き入れ材や調質材ならマシニングで加工される場合もあるかもしれませんが、高硬度鋼材用ツールでのマシニング加工やワイヤーカット加工では精度を満たせないものについて、大抵の場合ジグ研削盤を用いて仕上げ加工します。追伸、この様に超高精度な位置決めと同時に精密研削加工ができる点からも言えるように、ジグ研削盤については内面研削盤(インターナルグラインダー)を使用した加工とは根本から異なるということにもご理解頂けたことでしょう。

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ジグ中ぐり盤(ジグボーラー)・ジグ研削盤(ジグ研)発展の歴史

マザーマシン最高峰の代名詞であるジグ中ぐり盤ですが、二十世紀の初めにスイスで考案されたのを皮切りに各社は競って独自での開発により今日まで進化を遂げて来ました。日本初でジグボーラーの国産化を実現できたのは三井精機工業ということで有名ですがそれは1935年(昭和10年)のことだそうです。しかし、代表的なスイスのシップ社(SIP)はこの時点ですでに1μm読み光学スケールを使用した縦型ジグボーラーを製作しておりました。しかし、その優秀さにゆえに非常に高価な機械であり、後発会社の良き手本とされその座は奪われて行きました。現在日本国内でジグボーラーを生産するメーカーは他2〜3社で、海外は名の通る先駆会社で立型ジグボーラーのシップ社(SIP)とハウザー社(HAUSER)、横型ジグボーラーのディキシー社(DIXI)とデブリーグ 社(DEVLIEG)などがあります。さて、しばらく後にジグ研削盤が登場しましたが、これはジグボーラーを応用で考案されたジグボーラーの発展型と考えられます。ジグ研では国産の三井精機工業の他1社、海外メーカーでは先駆会社として、ムーア社(Moore)、ハウザー社(HAUSER)が名を馳せております。
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マシニングセンタ・ジグボーラーとの比較

金型業界の方々には意外に知名度の低いジグボーラーかもしれません、または、ジグボーラーは効率が悪いと思っておられるかもしれません。もっとも、そこまでの精度を必要としないと割り切っておられるかもしれません。しかし、マシニングセンタとジグボーラーの両機械は本来の役割と趣旨が全く異なってます。ジグボーラーは上記にも述べている通りはっきりとした機械の定義があります。最高精度の位置決めにより極めて正確なピッチにおいて、穴の直径を真円かつ真直に寸法精度の高い面に仕上げることに特化し究極の精度を目指した機械です。それに対し、CNC(Computer Numerical Control)、及び、ATC(自動工具交換装置)を備えた機械をマシニングセンタは万能機と言えます。精度については多少犠牲にしながらも、省力化、効率化、高速化を最優先し、それら両立を目指し現在に至ったマシニングセンタは反復継続した加工作業とNCプログラミングによる異形加工や輪郭加工、負荷の掛かる重切削も短時間で遂げることを特技としており、この点については超高精度を重視しているジグボーラーを凌ぎます。しかし、今日ではCNC制御でATC装置付のジグボーラーが存在しており、両機械の境目にもあいまいな様に感じ取れる部分もありますが、両機械におけるハッキリとした違いは、やはり機械の絶対的な空間精度によって区分されたうえで、相応な機械価格に反映されている他には何も見当りません。要するにジグボーラーとマシニングセンタを精度面において比較してみたところで、全く競い合う関係にはないとだけはこの場を借りて述べさせて頂きます。加工する品物の目的用途に応じて要求精度とコストに見合う適切な工作機械を選択すべきなのです。

備考

JIS規格(JIS B 0105)マシニングセンタ(MC)の定義
番号:C24
用語:マシニングセンタ
定義:
主として回転工具を使用し、工具の自動交換機能(タレット形を含む)を備え、工作物の取付け替えなしに、多種類の加工を行う数値制御工作機械。機械の構造によって、主軸が水平の横形マシニングセンタ、垂直の立て形マシニングセンタ、門形構造のコラムをもつ門形マシニングセンタなどがある。
機械の大きさの表し方:
各軸移動量、テーブル又はパレットの上面又は中心から主軸端面までの距離、及びテーブル又はパレット作業面の大きさ。
対応英語:machining center
慣用句:マシニング

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ジグボーラー&ジグ研 必要性と重要性

マシニングセンタのうち大多数は到底まだジグボーラーに匹敵するに至らないものの近年格段に精度を上げてきました。マシニングセンタもボーリング加工とフェーシング加工は可能ですから同時加工による効率化もあって、これら行程の場面では仕上げまでされる場合も随分あるかと思います。しかし一部の最上位機種だけが高精度であったり、あるいは高精度を維持できないなど、機械の仕様書などに謳っている精度を期待することは難しいと、その悩みを大勢の方が口を揃えておっしゃります。このように、マシニングセンタで大部分の加工をまかなえるようになった今日でも、マシニング加工での限界精度において、ジグボーラーやジグ研削盤の領域には到達することが容易でない分厚い壁があります。また、繰り返し位置決め精度を保証精度と誤解されている人をよく見かけますが、それは静的な条件において同じ方向から位置決めを数回行ったうえで最大差を等分した数値に±と表示しているに過ぎませんので、実際に精度を満たしているかは全くの別問題です。よって、機械ワーク範囲全域での水平度、真直度、直角度、真円度…がそこそこにしか仕上げられていない機械だとすれば、スケールフィードバックなどを装備しサブミクロン単位までの数値制御が可能であるとしても高精度は決して望めません。それは位置決めの再現性が高いということにしか過ぎないのです。真の空間精度はその機械の構造と最高精度の部品を如何に多く集積し構成されているかに加え、キサゲなどによる徹底的な調整で決まります。さて、実際に当社と取引のある幾つかの専用機メーカー様、ゲージメーカー様、金型部品メーカー様などでは当然に社内で高精度な工作機械と設備は万全に揃えておられます。しかし、肝心な部品については決まってジグボーラー、ジグ研を用いてでなければ可能にできない加工精度を求めておられます。ジグボーラー、ジグ研はマシニングセンタを超越した精度でその部分を補足するといった重要な役割をも果たしているのです。特に、マザーマシン用部品についてはマザーマシン最高峰の位置づけであるジグボーラー、ジグ研といった工作機械を用いることが必要不可欠であり、肝心な部品をこれよりも下位の工作機械のみを用いたとして絶対に成し得ることはできません。



  「JIG」?それとも「治具」?     ジグ中ぐり盤って?     ジグ研削盤って?
ジグ中ぐり盤(ジグボーラー) ジグ研削盤(ジグ研)発展の歴史
マシニングセンタ・ジグボーラーとの比較    ジグボーラー&ジグ研 必要性と重要性
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